洗礼──2002年の初陣で味わった敗北と、人間の弱さ

FX自動売買基盤『The XVI Architecture』と陸奥(Mutsu)の開発秘話を象徴するコンセプトイメージ

前回:原点──小学4年生で投資に魅せられた日

この記事は、シリーズ『陸奥 開発秘話』の第2回です。前回は、私が小学4年生で投資に出会い、深淵を覗き込んだ原点を語りました。今回は、24歳で迎えた初陣──そこで味わった“洗礼”と、人間の弱さが露わになる瞬間についてお話しします。

目次

1. 洗礼:2002年24歳 投資を志した少年の初陣

高校を卒業した私は、プログラミングを独学で2年間勉強し、BASIC、C言語、アセンブリ言語(当時はアセンブラと呼んでいました)PASCAL、Visual Basic、Visual Cなど、いくつかの言語を習得することができました。

そしてまずは、25歳までの起業を目指し、20歳からフリーランスのプログラマーとして仕事をはじめたのでした。

── そしてそこから月日が流れます。
仕事を始めてから2年後には、職場で知り合った女性と結婚し、そしてその翌年には、予定よりも前倒しで起業することもできました。

そんな折のことです。
ある程度の余剰資金ができたのと、たまたま請けていた案件がキリ良く終わったので、しばらく休業して投資を開始してみることにしました。

すると、ものの数分で200万儲かりました。
そしてその数分後。300万損したのです・・・。

そしてプラス100万。またプラス100万。マイナス100万。
・・・というのを2週間ほど繰り返しました。

もちろん、これまで勉強してきた、投資の格言、専門用語、チャートによるテクニカル分析などなど。
蓄積した知識を活用して、さまざまなことを試しました。

取引したのは、個別株、日経平均、為替などです。
確か最高でプラス800万くらいまでは行きました。

行きましたが、結局のところ、最終的な結果としては、数百万の投資資金が底をつきました。
そうです。無残にも負けたのです。

1.1. 数百万を失って見えた『人間』の弱点

完膚なきまでに叩きのめされました。
投資資金は溶けてなくなり、もう取引する訳にはいきません。

当面は、手持ちのお金だけで暮らしていく必要があるのですから。
妻にはあらかじめ、失敗したとしても生活に問題ないことは伝えていましたし、そうなったとしても生活していけるようにしていましたので、致命的な状況ではありません。

しかし、投資の観点では致命的な状況です。
資金ができるまで取引はできない のですから。

そこで、自分の投資について以下のように振り返りました。

  1. 取引のため、事前に3時間~15時間かけて、テクニカルやファンダメンタルの両面で調査したときは勝てていた
  2. ストップ・リミットを入れないときは高確率で損失を被っていた
  3. 知識として、やるべきこと、やるべきでないことを知っていても、危機的状況や最大勝機を目前にしたときの行動の難しさ

これら3つについて、ひとつひとつ掘り下げていきます。

1.1.1. 的中と懈怠(けたい) ── 規律遵守の鉄則

振り返り壱の巻。

「取引のため、事前に3時間~15時間かけて、テクニカルやファンダメンタルの両面で調査したときは勝てていた」
としたところです。

これについては、テクニカル分析により、チャートを細かに確認し、しかしそれだけでは世界情勢や為替、さまざまな影響で変わることもあります。
そのため、そこに加えてファンダメンタル分析もすれば、高確率で勝てる。
そう。これであれば勝てることは分かっていました。

だが、リソースは有限です。時間と労力がかなり奪われます。

15時間かければ、勝てる。その『的中』のロジックはすでに手中にありました。
だが、人間は機械ではありません。毎日十数時間の調査を完璧に遂行し続けるなど、苦行以外の何物でもありませんでした。

しだいに調査は甘くなり、計画は雑になります。この人間特有の『懈怠(けたい)』こそが、私の収支を不安定にさせている真犯人でした。

手法は正しいはずです。足りないのは、それを24時間365日、文句も言わずに実行する『安定したプロセッサ』です。
ならば、自分の脳ではなく、コードにその責務を移譲すればいい。
プログラミングで解決できるじゃないか。

1.1.2. 防波堤と蒼天 ── 損小利大の鉄則

振り返り弐の巻。

「ストップ・リミットを入れないときは高確率で損失を被っていた」
としたところです。

万が一、自分の予想に反して下落・上昇してしまったときには、その損失を最小限に食い止めるのは必須です。

取引を開始したときにも、入れた注文価格のどの程度までであれば、予想する利益を確保できる確率が高まるか。
それを考慮してリミットを入れる。これも必須です。

しかし、予想した利益を高確率で確保するための、ストップ・リミットの計算も大変で面倒なのです。
これを取引開始時に毎回計算し、注文時にあらかじめ損切・利確のストップ・リミットを入れる。

多くの本に、そのようなことが当たり前に書いてあります。
だがそれが、存外にも苦行なのです。

これも同じく、プログラミングで解決できる。

1.1.3. 羅針盤と嵐 ── 冷静沈着の鉄則

振り返り参の巻。

「知識として、やるべきこと、やるべきでないことを知っていても、危機的状況や最大勝機を目前にしたときの行動の難しさ」
としたところです。

これまで掘り下げてきたことを完璧に実行してきたとしても、最後の最後。
結局は、人間が操作して取引する裁量トレードでは、自身の心理がどうしても影響します。

嵐の中では、羅針盤を見る余裕すら奪われます。
画面上で激しく明滅する損益の数字は、私の理性を焼き切り、生存本能を直接揺さぶってきました。

冷静沈着であれ、という鉄則。
それは、安全な港(平時)で口にするのは容易ですが、荒れ狂う海(実戦)で実行するには、人間の精神はあまりに脆すぎたのです。

どれほど高性能な羅針盤(知識)を持っていても、操舵手(人間)がパニックを起こせば船は沈みます。
ならば、操舵そのものを自動化するしかありません。

これは、プログラミングだからこそ解決できます。
私は、投資をシステム化するため、要件定義などの設計を開始し、使えそうな書籍を探し始めました。

次回は、自動売買との出会いと、金融案件によって封印されるまでの“静かな5年間”を辿ります。

次回:出航と潜伏──自動売買の夜明けと、封印された5年間

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